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母乳栄養児にはビタミンDの補給が必要です

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母乳栄養とビタミンD欠乏 母乳栄養児がビタミンD欠乏状態になる危険性が指摘されています。  ビタミンDは骨の発育のために必須なビタミンで、欠乏状態ではくる病などを発症する可能性があります。しかし、ビタミンDは骨の発育以外に種々の事柄と関連することが指摘され、アメリカ小児科学会のニュースでは“Vitamin D is a media darling.”(メディアのお気に入り)と書かれています。ビタミンDの骨の発育以外との関連は、今後広く研究が行われていくと明らかになると思います。 1.ビタミンD欠乏の症状 1歳未満の乳児ではまれにビタミンD不足による低カルシウム血症のためけいれんを起こすことがあります。また、くる病では頭蓋骨が柔らかくなる頭蓋癆を認めることがあります。  1歳過ぎると、くる病ではO脚、独歩の遅れ、低身長を認めることがあります。多くの乳児はO脚で、歩行とともに6歳頃まではX脚傾向になります。乳児期のO脚は生理的なものと考えられています。しかし、1歳半から2歳のO脚の赤ちゃんではビタミンD不足が関係しているとが報告されました。(順天堂大学整形外科坂本優子先生ら:  https://www.juntendo.ac.jp/news/20200204-01.html 、 https://link.springer.com/article/10.1007/s00223-019-00619-9 ) 2.ビタミンD不足の原因 ビタミンDは食事や哺乳から摂取されるだけではなく、紫外線に当たることで皮膚で合成されます。したがって、ビタミンDが不足する原因は摂取量が不足することと、現在の日光を避けるような生活様式の変化による皮膚での合成が不足することが考えられます。 ビタミンDの活性化 時田章史:東京小児科医会報 2018;36:9  赤ちゃんのビタミンD不足の原因には、女性のビタミンD不足、母乳中のビタミンD不足が考えられます。ビタミンDの不足・欠乏の定義は、血中の25-ヒドロキシビタミンD濃度により、12ng/ml未満を欠乏状態、12~20ng/mlを不足状態とされている。 ビタミンDの欠乏状態と不足状態 時田章史:東京小児科医会報 2018;36:9 A.女性(母体)のビタミンD不足 1990年頃

生後12週までのケイツーシロップ投与で頭蓋内出血を確実に予防しよう

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母乳栄養とビタミンK欠乏 ビタミンKは血液を固める成分の生成に関わるビタミンです。  ビタミンKは胎盤移行性が悪く(母親のビタミンKが胎盤を通して胎児に移行しにくく)、出生後に摂取量が少ないと容易に欠乏状態になり出血症状が出現する可能性があります。  日本では1989年から 「1. 出生時、2. 生後一週目(産科退院時)、3.1 ヶ月健診受診時」の3回 、ビタミンK2シロップの経口投与が行われています。しかし、2011年に日本小児科学会は 生後12週まで週1回ビタミンKを投与する方法も推奨 しています。  ビタミンKの投与が開始される前の1978年から1980年の調査では、乳児ビタミンK欠乏性出血症は 4000に1人、母乳栄養児に限ると1700人に1人 と高率で、多くが頭蓋内出血を発症し、治療により予後は改善していませんでした。ビタミンKを投与するようになりビタミンK欠乏症は減少しました。 特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症推定罹患数(率)の推移 塙嘉之:周産期医学 22:513, 1992 白幡聡:黎明 24:58,2012 しかし、投与開始後の1999年から2004年に行われた調査でも、乳児ビタミンK欠乏性出血症が報告されています。ビタミンKを3回投与されたにもかかわらず発症した症例の多くは基礎疾患を持った症例でしたが、基礎疾患がない症例も報告されていました。また、2002から2010年に行われたビタミンK欠乏に伴う乳児頭蓋内出血症例の検討でも、基礎疾患の合併がなくビタミンKを3回投与されている症例が含まれていました。(余谷暢之他:日児誌 116:1102,2012) ビタミンK製剤予防投与と特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症の報告患者数 白幡聡:黎明 24:58,2012  さらに、ヨーロッパ諸国の調査によると頭蓋内出血の発症が、 日本と同様の3回の投与では出生10万人に対して0.44人でしたが、生後12週まで週1回投与された乳児からは1例もありませんでした。 ビタミンK製剤の予防投与方法別にみた乳児ビタミンK欠乏性出血症の頻度 日本小児科学会「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)」 生後1か月以降に母乳栄養が中心のあかちゃんには、よ