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小児の新型コロナウイルス感染症

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染することで起きます。人に感染するウイルスは6種類が知られていました。いわゆるかぜの原因となる4種類のコロナウイルス(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)はインフルエンザシーズンに一致し流行し、かぜの原因の10-15%をしめ、6歳までにほとんどの人が感染するといわれています。さらに重症の呼吸器感染症を起こすSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome重症急性呼吸器症候群)ウイルスとMERS(Middle East Respiratory Syndrome中東呼吸器症候群)ウイルスがあります。SARSは中国広東省から流行が始まり、2003年までに774人が死亡しています。MERSは2012年サウジアラビアから流行がはじまり、これまでに27カ国で2,494人の感染者がWHOへ報告され(2019年11月30日時点)、そのうち858人が死亡しています。SARS-CoV-2は人に感染することがわかった7番目のコロナウイルスです。  CVID-19の報告例が増えてくると、小児の重症例も報告されるようになってきています。小児のCOVID-19について、現在までに中国から主要な医学雑誌に報告された論文と米国からの報告を中心にまとめてました。  これら報告からの現在の小児のCOVID-19特徴は 1.小児の感染者数の割合は少ない 2.小児の重症者は少ない 3.小児の感染者は家族内感染が多い と考えられます。 1.小児の感染者数の割合は少ない  日本の20歳未満の感染者数は全体の約3%です。  中国の2020年2月11までの報告例の大規模調査では、全報告例72,314例のうち確定例が44,672例で、確定例のうち0~9歳は416例(0.9%)、10~19歳は549例(1.2%)でした。(図1) 図1 年齢別の患者数と致命率(中国 2020年2月11日まで) Zunyou Wu et.al. Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

新型コロナウイルス感染症流行中でもスケジュール通りに予防接種をしましょう

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新型コロナウイルス感染症流行中の予防接種 スケジュール通りに接種を  新型コロナウイル感染症(COVID-19)の流行が拡大し、日々刻々とその状況は変化しています。このような状況下では緊急性のない手術などの医療は延期するような提言がなされています。しかし、ワクチンは、子どもたちの健康を守るには不可欠で、スケジュール通りに接種することがユニセフ、米国疾病予防管理センター(CDC)、日本と米国の小児科学会から勧められています。 接種を受ける際の注意点 を受ける際に重要なことは、COVID-19に限らず感染症を、周りの人にうつさないこと、周りの人からうつされないことです。接種を受けることで生じるデメリットを最小限に抑える対策が重要になります。以下の点に注意しながら接種を受けてください。 接種を受けるお子さんの体調を確認する。 予防接種を受ける医療機関の体制が、一般の外来と時間的、空間的に重なっていないか確認する。(予防接種専用の時間があるか?その時間帯には一般の診療が行われていないか?) 付き添いの方の発熱や咳などの症状がないことを確認する。 成人では手指消毒や手洗いの励行とマスクの着用は必須です。 可能な限り、接種を受ける以外の小児、祖父母などの同伴を避ける。(付き添いは一人だけにする。) 接種のポイント 現在の新型コロナウイルス流行時の接種でも最も重要なのが、乳児期、幼児期早期のワクチンです。 生後2か月から接種を開始する。 生後6か月までにB型肝炎ワクチンの3回目以外の接種を完了する。 1歳からの接種を遅らせずに接種漏れを防ぐ。 VPDを知って、子どもを守ろうの会が推奨するスケジュール  最終的にはCOVID-19の周囲の流行状況、感染者の数が重要です。接種医と相談の上、可能な限り接種をすすめていくことをおすすめします。  COVID-19はワクチンがまだ開発されていないため、科学的に確実な予防方法がありません。ワクチンがすでに開発され、接種することで予防できる病気(VPD)は確実に予防しましょう。 NPO法人VPD知って子どもを守ろうの会では「 新型コロナウイルス感染症と予防接種に関するQ&A 」を解説しました。 http://www.know-vpd.jp/faq/20711.php

母乳栄養児にはビタミンDの補給が必要です

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母乳栄養とビタミンD欠乏 母乳栄養児がビタミンD欠乏状態になる危険性が指摘されています。  ビタミンDは骨の発育のために必須なビタミンで、欠乏状態ではくる病などを発症する可能性があります。しかし、ビタミンDは骨の発育以外に種々の事柄と関連することが指摘され、アメリカ小児科学会のニュースでは“Vitamin D is a media darling.”(メディアのお気に入り)と書かれています。ビタミンDの骨の発育以外との関連は、今後広く研究が行われていくと明らかになると思います。 1.ビタミンD欠乏の症状 1歳未満の乳児ではまれにビタミンD不足による低カルシウム血症のためけいれんを起こすことがあります。また、くる病では頭蓋骨が柔らかくなる頭蓋癆を認めることがあります。  1歳過ぎると、くる病ではO脚、独歩の遅れ、低身長を認めることがあります。多くの乳児はO脚で、歩行とともに6歳頃まではX脚傾向になります。乳児期のO脚は生理的なものと考えられています。しかし、1歳半から2歳のO脚の赤ちゃんではビタミンD不足が関係しているとが報告されました。(順天堂大学整形外科坂本優子先生ら:  https://www.juntendo.ac.jp/news/20200204-01.html 、 https://link.springer.com/article/10.1007/s00223-019-00619-9 ) 2.ビタミンD不足の原因 ビタミンDは食事や哺乳から摂取されるだけではなく、紫外線に当たることで皮膚で合成されます。したがって、ビタミンDが不足する原因は摂取量が不足することと、現在の日光を避けるような生活様式の変化による皮膚での合成が不足することが考えられます。 ビタミンDの活性化 時田章史:東京小児科医会報 2018;36:9  赤ちゃんのビタミンD不足の原因には、女性のビタミンD不足、母乳中のビタミンD不足が考えられます。ビタミンDの不足・欠乏の定義は、血中の25-ヒドロキシビタミンD濃度により、12ng/ml未満を欠乏状態、12~20ng/mlを不足状態とされている。 ビタミンDの欠乏状態と不足状態 時田章史:東京小児科医会報 2018;36:9 A.女性(母体)のビタミンD不足 1990年頃

生後12週までのケイツーシロップ投与で頭蓋内出血を確実に予防しよう

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母乳栄養とビタミンK欠乏 ビタミンKは血液を固める成分の生成に関わるビタミンです。  ビタミンKは胎盤移行性が悪く(母親のビタミンKが胎盤を通して胎児に移行しにくく)、出生後に摂取量が少ないと容易に欠乏状態になり出血症状が出現する可能性があります。  日本では1989年から 「1. 出生時、2. 生後一週目(産科退院時)、3.1 ヶ月健診受診時」の3回 、ビタミンK2シロップの経口投与が行われています。しかし、2011年に日本小児科学会は 生後12週まで週1回ビタミンKを投与する方法も推奨 しています。  ビタミンKの投与が開始される前の1978年から1980年の調査では、乳児ビタミンK欠乏性出血症は 4000に1人、母乳栄養児に限ると1700人に1人 と高率で、多くが頭蓋内出血を発症し、治療により予後は改善していませんでした。ビタミンKを投与するようになりビタミンK欠乏症は減少しました。 特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症推定罹患数(率)の推移 塙嘉之:周産期医学 22:513, 1992 白幡聡:黎明 24:58,2012 しかし、投与開始後の1999年から2004年に行われた調査でも、乳児ビタミンK欠乏性出血症が報告されています。ビタミンKを3回投与されたにもかかわらず発症した症例の多くは基礎疾患を持った症例でしたが、基礎疾患がない症例も報告されていました。また、2002から2010年に行われたビタミンK欠乏に伴う乳児頭蓋内出血症例の検討でも、基礎疾患の合併がなくビタミンKを3回投与されている症例が含まれていました。(余谷暢之他:日児誌 116:1102,2012) ビタミンK製剤予防投与と特発性乳児ビタミンK欠乏性出血症の報告患者数 白幡聡:黎明 24:58,2012  さらに、ヨーロッパ諸国の調査によると頭蓋内出血の発症が、 日本と同様の3回の投与では出生10万人に対して0.44人でしたが、生後12週まで週1回投与された乳児からは1例もありませんでした。 ビタミンK製剤の予防投与方法別にみた乳児ビタミンK欠乏性出血症の頻度 日本小児科学会「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)」 生後1か月以降に母乳栄養が中心のあかちゃんには、よ