投稿

2026年のインフルエンザの状況(10月11日までの情報)

イメージ
 今シーズンのインフルエンザの状況 (2026年10月11日までの報告例) インフルエンザA(H1N1)pdm09が流行し、小児の重症例が報告されています。  インフルエンザは流行時期に合わせ、第36週(8月末~9月初旬)から翌年の第35週までの1年間をインフルエンザシーズンとされています。2026/2027年シーズンは2026年8月31日から2027年9月5日までです。 今シーズンの流行株  インフルエンザワクチンにはインフルエンザA(H1N1)pdm09、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザB(ビクトリア系統)の3種類の株が含まれています。(3種類の株がワクチンに含まれているため、インフルエンザに1回感染してもそのシーズンのワクチンの接種が推奨される理由です)。  2025年/2026年シーズンは、前半はインフルエンザA(H3N2)(サブクレードK)が流行し、後半はインフルエンザBが流行しましたが、今シーズンは検出されているウイルスはほとんどインフルエンザA(H1N1)pdm09です(図1)。  図1 週別のインフルエンザ分離株の割合 (2026年26週~ 地方衛生研究所からの登録 2026年10月17日参照) 定点あたりの報告数と入院数  インフルエンザは、全国約3,000カ所の急性呼吸器感染症(ARI)定点医療機関(小児科定点約2,000カ所、内科定点約1,000カ所)から報告されています。2026年は26週から徐々に報告数が増加し、34週(8月17日~23日)に1.11となり、流行開始となる1.0を越えました。 その後も増加し、9月の連休(39週)で一時減少しましたが、40週(9月28日~10月4日)に11.35となり、注意報レベルの10を超えました(警報レベルは定点あたり30です)(図2)。  インフルエンザによる入院は全国約500カ所の基幹定点医療機関から報告されています。入院数も徐々に増加し、41週には1123例の入院例が報告されました。26週から41週までの入院数は4122例で、年齢別の入院割合は、80歳以上が38.7%、10歳未満が37.0%と多くなっています。(図3)。2025年/2026年シーズンの年齢別の入院割合と比べて、10歳未満(20.1%)の割合は高くなっています。 図2 インフルエンザ定点あたりの報告数と年...

小児のインフルエンザ 2026年9月更新

イメージ
   小児のインフルエンザ(2026年9月改訂)  インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類がありますが 、人に季節性流行を引き起こすのはA型とB型インフルエンザウイルスだけです。 A型インフルエンザウイルスは最も重篤な臨床疾患を引き起こし、ヒト集団における季節性流行やパンデミックの最も一般的な原因です。 症状と合併症(図1)  インフルエンザウイルスに感染した場合は、無症状のことや軽微な症状のこともありますが、重篤な合併症のために死亡することもあります。通常、突然始まる発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感、空咳、咽頭痛、鼻づまりなどの症状を特徴とします。吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状も小児ではよく見られます。また、結膜炎や眼痛を認めることもあります。インフルエンザの潜伏期(感染から症状発現までの期間)は1~4日、平均2日です。ウイルスは通常、症状発現の1日前から5~7日後まで排出されます。   多くの人は数日から2週間で症状が改善します。しかし、経過中に種々の合併症が出現し、生命を脅かされることもあります。  呼吸器合併症は小児から高齢者まで生じることがあります。小児では、クループ、気管支炎、中耳炎が起こることがあります。全年齢において、一次性インフルエンザウイルス性肺炎と二次性細菌性肺炎を起こすことがあり、呼吸不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などを起こす可能性があります。  神経合併症には、脳症、脳炎、横断性脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎が報告されており、成人よりも小児に多く見られます。乳幼児は熱性けいれんを起こすことがあります。一過性の意識低下や完全に回復することもありますが、後遺症を残したり脳死を伴う劇症急性壊死性脳炎が発生することもあります。 BMJ 2016;355:i6258 doi: 10.1136/bmj.i6258 図1 インフルエンザの症状と合併症  今シーズン(2026/27シーズン)は、8月末に流行期が宣言され、インフルエンザAウイルスが検出されています。しかし、昨シーズンとは違い検出されているのは、現在A/H1N1pdm09 亜型ウイルスです。このウイルスは2009年に新型インフルエンザウイルスによるパンデミックを起こしたウイルスです。2009年から2010年は、小児が流行の中心で、重症の肺炎や脳症の...

2026/2027年シーズンの流行株とインフルエンザワクチン株

 2026/2027年シーズンの流行株とインフルエンザワクチン株 2026/2027年シーズンのインフルエンザの流行株  昨シーズン(2025/26シーズン)は、2025年9 月以降、A/H3N2 亜型ウイルスHA 遺伝子系統樹上、サブクレードK のウイルスが多く検出されました。2026年1月からはB/ビクトリア系統のウイルスが検出されました。( 2025年/26年シーズンに流行したサブクレードKに対する有効性 )  今シーズン(2026/27シーズン)は、8月末に流行期が宣言され、インフルエンザAウイルスが検出されています。しかし、昨シーズンとは違い検出されているのは、現在A/H1N1pdm09 亜型ウイルスです。このウイルスは2009年に新型インフルエンザウイルスによるパンデミックを起こしたウイルスです。2009年から2010年は、小児が流行の中心で、重症の肺炎や脳症のために集中治療を必要とした小児が多く報告されました。 2026/27シーズンのインフルエンザワクチン株 インフルエンザワクチンの株は、世界保健機関(WHO)が1年に2回、北半球と南半球に対する推奨株を公表します。WHOの北半球推奨株を基に、国内の国立感染症研究所と厚生労働省が検討して決定します。(フルミストは製造メーカーがWHOの推奨株からワクチン株を選定し、各国の承認を受けています) 鶏卵培養不活化ワクチン A/スイス/6849/2025(H1N1) A/ミシガン/105/2025(H3N2) B/東京/EIS13-175/2025(ビクトリア系統) 弱毒生ワクチン:フルミスト A/スイス/6849/2025(H1N1) A/ダーウィン/1369/2025(H3N2) B/パース/115/2025(ビクトリア系統) 2シ-ズン前の2024/2025年シーズンにはA/H1N1pdm09 亜型ウイルスが多く検出されました。クレード5a.2aのサブクレードC.1.9.3のウイルスが流行していました。しかし、今シーズンは5a.2a.1クレードから派生したサブクレードD.3.1およびD.3.1.1が検出されています。2024/2025年シーズンにインフルエンザAに罹患しても今シーズン流行しているウイルスに全く免疫がないわけではありませんが、2年経過し免疫が低下している可能性があること、ウイルスの変...

2025年/26年シーズンに流行したサブクレードKに対する流行性

イメージ
 2025年/26年シーズンに流行したサブクレードKに対する有効性  季節性インフルエンザワクチンの有効性(Effectiveness)は、季節、ワクチンと流行ウイルスとの抗原類似性、患者の年齢などによって変動します。2025-26年シーズンは当初はインフルエンザA型(H3N2)が流行し、2026年にはB型が流行しました。インフルエンザA(H3N2)は抗原的に変異したサブクレードKウイルスによるもので、2025年9月のWHOの報告では、ワクチンの有効性が低い可能性があると指摘されました。しかし、英国の初期の報告で、サブクレードKが大部分のA(H3N2)による有効性が示されました。 英国の2025/26年シーズンのフルミストの有効性  英国では2~17歳に対しては弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト)が推奨され、不活化ワクチンはフルミストができない人だけに接種されます。シーズン初めに検出されたインフルエンザAH3ウイルスの87%がサブクレードKと報告されています。2~17歳の救急外来での有効性は74.7%、入院での有効性は72.8%でした。 表1 2025/26シーズンのAH3に対するEffectiveness (英国 2025/9/27~11/2) 日本の2025/26年シーズンのインフルエンザワクチンの有効性  日本の生後6か月から15歳を対象に行われたインフルエンザAに対する検討では、不活化ワクチンのEffectivenessは43%、弱毒生ワクチンの有効性は81%でした。弱毒生ワクチンの有効性が高い傾向は認めましたが、統計学的には有意ではありませんでした。日本でも、流行したインフルエンザAウイルスはサブクレードKでした。なお、インフルエンザBに対しては,どちらのワクチンも有意な有効性を示しませんでした。 表2 2025/26シーズンのインフルエンザAに対するEffectiveness (2025/11~2026/3/15 生後6か月~15歳) 2026~2027年シーズンのインフルエンザワクチンの予約 フルミストの予約 2026年インフルエンザの流行

経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト) 2026年

イメージ
経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト)  鼻へ噴霧するタイプのインフルエンザワクチンです。日本では今まで承認されておらず、一部の医療機関で個人輸入した海外のワクチンが使用されていました。2024シーズンから日本で正式に承認されたために正規のワクチンが使用できるようになりました。販売量は増加するようですが、入荷量には制限があり、上限に達すると予約できなくなります。今年のフルミスト(LAIV)はインフルエンザAH1、AH3、B型(ビクトリア系統)の3種類のウイルスに対応しています。いずれのワクチン株も変更されており、今シーズンは新しいワクチン株が使用されています。投与された弱毒ウイルスは鼻で増殖し免疫を誘導しますが、肺などでは増殖せず安全性が確保されています。 接種対象者 2~18歳 接種禁忌 妊婦、免疫不全者、免疫不全となる薬物の投与を受けている人 接種回数  1回 投与方法  ワクチンを両方の鼻に少量(0.1ml))ずつ投与します。接種直後にくしゃみが出ても、再投与はしないことになっています。 フルミストの有効性  海外で行われたフルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン:LAIV)の臨床試験では、不活化インフルエンザワクチン(IIV)の有効性に勝るデータが報告されたため、非常に期待され発売されました。  米国では2003年に発売され、2009年以前に報告された3価のLAIVがIIVより有効性が高いというデータから、2014年に2から8歳に対して4価のLAIVをIIVより優先して接種することを推奨しました。しかし、2013-14年シーズンにAH1N1pmd09に対してLAIVは有意な有効性を示さず、IIVは有意な有効性を示したため、2015年にLAIVを優先する推奨を撤回しました。さらに2015-16年シーズンにもAH1N1pmd09に対してLAIVの有効性が低かったため、2016-17年シーズにはLAIVの接種の推奨を中止しました(2017-18年シーズンも推奨しませんでした)。2017年にLAIVに含まれるAH1N1pmd09のウイルス株がA/California/7/2009からA/Slovenia/2903/2015に変更され後に、米国では2018-19年シーズンからLAIVを再推奨しました。しかし、現在では、以前のようにIIVより優先的に...

2026年インフルエンザの流行

イメージ
   インフルエンザの流行の開始と流行のピークが早くなっています   COVID-19が減少した後から、インフルエンザの流行が早期に始まり、ピークも12月になっています。インフルエンザワクチンの接種を早期に行うことをお勧めします。  インフルエンザは夏にかかることもありますが、毎年、冬に患者数が増加します。インフルエンザの患者数は、全国の約5000のインフルエンザ定点医療機関から報告されています。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前のインフルエンザは11月に流行が始まり、1月末(4~5週)にピークがありました(図1 図2)。  COVID-19の流行後は、インフルエンザの大きな流行はありませんでした。しかし、COVID-19が減少した後、2022/2023年シーズンからインフルエンザの感染数が増加しました。2023/2024年シーズンは9月から報告数が増加し、流行のピークは12月初め(49週)でした。2024/25年シーズンも10月末(44週)に流行がはじまり、ピークは12月末(52週)でした。2025/26年シーズンは9月末(39週)に流行がはじまり、ピークは11月中旬(47週)でした。今シーズン(2026/27)は8月中旬(34週)に流行が始まっています。(図1 図2)。 すでに、インフルエンザ脳炎などの重症例も報告されています。 https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/idwr/2026/idwr2026-33.pdf https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/idwr/2026/idwr2026-31-32.pdf   図1 2016~2026年のインフルエンザの報告数 図2 2014/15シーズン~2024/25シーズンのインフルエンザの流行開始とピーク 2026~2027年シーズンのインフルエンザワクチンの予約

HPVワクチン の早期接種の重要性 ②

イメージ
  HPVワクチン の早期接種の重要性 ②  浸潤性子宮頸がんに対する早期接種の効果    子宮がんは子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんで、ほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。  最近の研究から、接種開始年齢が若いほど、浸潤性子宮頸がんリスクの予防効果が大幅に高いことが判明しました。これは、HPVワクチンには、すでに感染に対する治療効果がなく、性交渉を介したHPV曝露前に接種することで最大の利益をもたらします。 子宮頸がんとHPVワクチン  HPVは200種類以上の遺伝子型がありますが、このうちの約13種類の高リスク型HPVが子宮頸がんの原因となります。HPVは性的接触で生じた小さな傷から侵入し子宮頸部上皮の最下層にある基底細胞に感染します。女性の80~90%が生涯に一度はHPVに感染し、男性も同様で、HPVはありふれたウイルスです。HPVに感染しても、通常無症状です。感染した女性の多くではHPVは消退しますが、ごく一部の人が持続感染を起こし、子宮頸がんに進展する場合があります。  HPVの感染した基底細胞が、表皮形成の分化を始めるとウイルスが増殖し、正常細胞と形や大きさが異なる異型細胞となります。まず軽度異形成(CIN1)が生します。HPV感染が持続すると異型細胞が上皮層の基底膜から1/3以上に達し、中等度異形成(CIN2)となり、さらに2/3以上を占めるようになると高度異形成(CIN3)となり、上皮の一番外側まで異形細胞が増殖すると上皮内がんとなります。基底膜を越えて浸潤すると、浸潤がんに進行します(図1)。高度異形成と上皮内がんは浸潤がんへ進行するリスクが高くなります。 図1 HPVと子宮頸がん(扁平上皮がん)の進展  高リスク型HPVの持続感染が一定期間(少なくとも6か月以上)続くと、子宮頸がんの前がん病変となるリスクが高いとされています。なお、子宮頸部病変の進展は一方向的ではなく、退縮することもあります。このように子宮頸がんの発症には、CIN病変が進展・退縮するため、感染後数年から数十年が必要と考えられています。また感染したHPVの遺伝子型によっても、子宮頸がんの発症リスク、発症までの期間が異なります。さらに、喫煙、経口避妊薬の摂取、出産回数、性交渉パートナー数なども関与すると考えられています。  G7諸国は子宮頸がんの罹...