子どもの新型コロナウイルス感染症の現状(2022年12月)

 子どもの新型コロナウイルス感染症の現状

(2022年12月)

新型コロナウイルス感染症は
成人のワクチン接種率は高く、小児のワクチン接種率は低いため、
成人にとってはワクチンを接種した人の感染症、
小児にとってはワクチンをしていない人の感染症
となっています。

新型コロナワクチンの接種率

 首相官邸から新型コロナウイルワクチンの年代別の接種率が公表されています。
 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
 2022年12月12日時点の2回接種率は年齢とともに接種率は低下していますが、50歳代以上では90%以上、20~40歳代では80%以上、12から19歳では75%以上です。これに比べて、5から11歳では1回以上の接種率20.1%、2回接種率は19.1%と極端に低くなっています。(グラフ1)
 したがって、12歳以上の新型コロナウイルス感染症はワクチン接種を済ませている人がほとんどで、11歳以下の感染者はワクチン接種を済ませていない人がほとんどという状況になっています。同じ新型コロナウイルスに感染しても、多くの成人はその時点ですでに新型コロナウイルス感染症に対する免疫を持っていますが、反対に多くの小児は全く免疫を持っていません。免疫が無い状態で感染すれば、発症する割合、重症になる割合が増加する危険があります。

 グラフ1 新型コロナワクチンの接種率

年代別の新型コロナウイルス感染症の罹患率

 2020年の新型コロナウイルス感染症の流行当初は小児の感染例は少なく重症例、死亡例はないとメディアで繰り返し報道されていました。多くの保護者がこの情報を更新することなく、現在も小児の新型コロナウイルス感染症はこのような情報のまま認識されていることが多いのではないかと思います。

 2021年までの人口1万あたりの罹患率は、20から29歳が297人で最高で、10から59歳までが多く、10歳未満は88人でした。(グラフ2)

グラフ2 年齢別のSARs-COV2罹患率(陽性率)
(2020/9/2~2021/12/28)


 2022年になり、成人の接種率は向上し、オミクロン株が流行し、小児の感染例が増加しました。2022年9月までのデータでは、10歳未満の罹患率が人口1万あたり2518人で、他の年代に比べて最も最も高率率になりました。(グラフ3)

グラフ3 年齢別のSARs-COV2罹患率(陽性率)
(2021/12/29~2022/9/20)


 新型コロナウイルス感染症は当初は成人の感染症でしたが、現在は小児中心の感染症となってきています。


年代別の新型コロナウイルス感染症の重症者数

 若年者は高齢者に比べ重症者は少数です。しかし、2022年になり、罹患者が増加し、小児の重症例も増加しています。2020年9月から2021年12月までの各週の重症者数の合計は10歳未満6例、10から19歳が6例、20から29歳56例でした。しかし、2022年になると小児の重症者数が増加しました。2022年の各週の重症者数の合計は10歳未満は173例、10から19歳は73例、20から29歳が140例で、10歳未満の重症者が大きく増加しました。重症者は2月から4月のオミクロン株BA1、BA2流行、7月から9月のオミクロン株BA5の流行に一致して増加しました。(グラフ4)

 小児集中治療学会の報告では、集中治療を要した小児のうちワクチン接種をしているのは、3%だけでした。

グラフ4 週別の新型コロナウイルス感染重症者数
(30歳未満 2022/1/5~12/13)



オミクロン株流行後の小児の合併症

 オミクロン株流行後に小児ではけいれんを合併する例とクループを合併する例が増加することが報告されています。
 小児科学会が、3月に公表した   「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」の「中間報告: 第3報 オミクロン株流行に伴う小児COVID.19症例の臨床症状・重症度の変化」から作成したけいれんの患者数グラフです。新型コロナウイルス感染症のけいれんの合併は、熱性痙攣の好発年齢である1から4歳は流行初期に11例、デルタ株流行期に10例でしたが、オミクロン株流行期の2022年1月から2月は22例と増加しました。さらに5-11歳の年長児も、流行初期では4例、デルタ株流行期では0でしたが、オミクロン株流行期には18例と増加しており、オミクロン株になって年長児も含めて痙攣を起こしやすくなったと考えられてます(グラフ5)。小児集中治療学会の報告では、集中治療を要した小児のうち40%はけいれんまたは急性脳症が原因でした。

グラフ5 新型コロナウイルス感染症のけいれん合併患者数

 ボストン小児病院の新型子rなウイルス感染症に合併したクループの症例数の変化を表しています。75例がクループと診断され、このうちの81%がオミクロン株流行期の症例でした。(グラフ6)

グラフ6 新型コロナウイルス感染症のクループ合併患者数
(ボストン小児病院)

小児の新型コロナウイルスの死亡例

 若年者は高齢者に比べ死亡者は少数です。しかし、2022年になり、小児の罹患者、重症者の増加に伴い、小児の死亡例も増加しています。
 グラフ7は厚生労働省のデータからわかるー新型コロナウイルス感染症情報に公開されているデータから作成したグラフで、昨年の9月以降の20歳未満の累積死亡数です。現在、10歳未満は29例、10~19歳は13例の死亡が報告されています。10歳未満はオミクロン株流行前の2022年2月までは死亡者はなく、全例オミクロン株流行後の報告です。
 2022年8月までの41症例のうち国立感染症研究所が調査した29例のなかで15例は基礎疾患がありませんでした。また、ワクチン接種対象年齢の15例のうち13例はワクチンを接種していませんでした。

グラフ7 20歳未満の新型コロナウイルス感染累積死亡数

年代別の新型コロナウイルス感染症の死亡率の推移

 グラフ8は第5波(2021年6月30日から9月28日)、第6波(2021年12月29日から2020年3月30日)、第7波(2022年6月30日から9月20日)の年齢別の死亡率の推移を見たグラフです。若年者は高齢者に比べ死亡者は少数です。10歳以上の年齢群では第5波、第6波、第7波と死亡率は低下してきています。しかし、10歳未満の年齢群では第5派での死亡例は0でしたが、第6波、第7波と死亡率が上昇しています。これは10歳未満ではワクチンの接種率がの年齢群より極端に低いことが要因と推定できます。





グラフ8 年齢別の死亡率の推移

 このように、オミクロン株流行後は新型コロナウイルス感染症は小児中心の病気となり、症例数の増加に伴い、重症例、死亡例が増加しています。小児の新型コロナウイルス感染症は必ずしも軽症ではないとことを認識し、新型コロナワクチンの接種を行うことが重要です。