フルミスト

 フルミスト

経鼻弱毒生インフルエンザワクチン

 鼻へ噴霧するタイプのインフルエンザワクチンです。日本では今まで承認されておらず、一部の医療機関で個人輸入した海外のワクチンが使用されていました。今回、日本で正式に承認されたために正規のワクチンが使用できるようになりました。2024年~2025年シーズンは販売量に制限があるようです。今年のフルミスト(LAIV)はインフルエンザAH1、AH3、B型(ビクトリア系統)の3種類のウイルスに対応しています。投与された弱毒ウイルスは鼻で増殖し免疫を誘導しますが、肺などでは増殖せず安全性が確保されています。


接種対象者

2~18歳

接種禁忌

妊婦、免疫不全者、免疫不全となる薬物の投与を受けている人

接種回数 

1回

投与方法

 ワクチンを両方の鼻に少量(0.1ml))ずつ投与します。接種直後にくしゃみが出ても、再投与はしないことになっています。


フルミストの有効性

 海外で行われたフルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン:LAIV)の臨床試験では、不活化インフルエンザワクチン(IIV)の有効性に勝るデータが報告されたため、非常に期待され発売されました。

 米国では2003年に発売され、2009年以前に報告された3価のLAIVがIIVより有効性が高いというデータから、2014年に2から8歳に対して4価のLAIVをIIVより優先して接種することを推奨しました。しかし、2013-14年シーズンにAH1N1pmd09に対してLAIVは有意な有効性を示さず、IIVは有意な有効性を示したため、2015年にLAIVを優先する推奨を撤回しました。さらに2015-16年シーズンにもAH1N1pmd09に対してLAIVの有効性が低かったため、2016-17年シーズにはLAIVの接種の推奨を中止しました(2017-18年シーズンも推奨しませんでした)。2017年にLAIVに含まれるAH1N1pmd09のウイルス株がA/California/7/2009からA/Slovenia/2903/2015に変更され後に、米国では2018-19年シーズンからLAIVを再推奨しました。しかし、現在まで以前のようにIIVより優先的にLAIVを接種することを推奨はしていません。

 一方、英国では接種の推奨を中止することはなく継続され、2~17歳に対しては、LAIVを接種することを推奨しています。

 日本で行われた臨床試験は、有効性が低かったA/California/7/2009を含むワクチンを使用して行われ、統計学的に有意な有効性は示されていますが、28.8%と低い有効性でした。

 メーカー(海外)の報告ではA/Slovenia/2903/2015に変更された後の有効性は、以下のように公表されています。しかし、このグラフで示されている成績は、LVAIVとIIVを直接比較した検討ではないこと、それぞれの検討デザインは同一ではないことに注意が必要です。


https://www.flumisthcp.com/vaccine-effectiveness-and-efficacy.html

フルミストの安全性

 接種後の有害事象として、鼻閉・鼻漏、咳嗽、口腔咽頭痛、頭痛などがあげられています。

 他のワクチンと同様に非常にまれな副反応として、アナフィラキシーなども報告されています。


日本の添付文書に記載されている接種注意者

1)ゼラチン含有製剤またはゼラチン含有の食品に対して、ショック、アナフィラキシー(じんましん、呼吸困難、血管性浮腫など)などの過敏症を起こしたことがある方

2)心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患などの基礎疾患のある方

3)過去に予防接種で接種後2日以内に発熱、全身性の発疹などのアレルギーを疑う症状がみられた方

4)過去にけいれん(ひきつけ)を起こしたことがある方

5)過去に免疫状態の異常を指摘されたことのある方、または近親者に先天性免疫不全症の方がいる方

6)重い喘息のある方または喘鳴の症状のある方

7)薬の服用または食事(鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のもの)で発疹が出たり、体に異常をきたしたことのある方

8)発育が遅く、医師、保健師の指導を受けている方

9)妊娠中または妊娠の可能性のある方(接種前1か月間避妊していない方)、授乳中の方

10)サリチル酸系医薬品(アスピリンなど)、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸を服用している方

 該当する方は受診時にご相談ください。


 海外では20年以上の使用経験があるワクチンですが、国ごとの有効性、推奨には違いがあります。今シーズンから日本では正式に使用が開始されるため、国内の有効性、安全性のデータを蓄積していく必要があります。