9価HPVワクチン ① 2回接種と3回接種の抗体価

9価HPVワクチンの2回接種



キャッチアップ接種の詳細は厚生労働省の「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」をご覧ください。

 2014年にWHOはHPV4、HPV2ともに9~14歳の2回接種を推奨し、2017年からはHPV9も9~14歳の2回接種を推奨しています。米国は2016年から9~14歳に対して2回接種に変更しました。

 

3種類のHPVワクチン

現在、日本では3種類のHPVワクチンの接種が可能です。

 2価HPVワクチン(サーバリックス):子宮頸がんアドの原因となる高リスク型のHPV16、HPV18型

 4価HPVワクチン(ガーダシル):HPV16、HPV18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる低リスク型のHPV6、HPV11型

 9価HPVワクチン(シルガード9):HPV6、HPV11、HPV16、HPV18型に加え、高リスク型のHPV31、HPV33、HPV45、HPV52、HPV58型

 HPV6・11型は男女の生殖器粘膜にできる良性のイボである尖圭コンジローマの原因の約90%です。9価HPVワクチンは子宮頸がんの原因のHPVの約90%以上をカバーします。

HPVワクチンの有効性の評価

 ワクチンの有効性の評価は、対象集団を無作為に「評価するワクチンを接種する集団」と「そのワクチンを接種しない集団」にわけてそれぞれの群での疾患の発生する割合を比較し、ワクチン接種で疾患が減少する割合を検討して有効性を評価します。HPVワクチンの有効性の評価は、高度子宮病変の減少を指標として検討が行われます。しかし、対象の疾患の頻度が低いためにワクチンの発症予防効果を評価できない場合や、4価のHPVワクチンがすでに使用されている状況で9価のHPVワクチンの評価を行うような際など、接種群と非接種群にわけて有効性を検討することが倫理的に許されない場合などに、発症予防との相関性が確立されている抗体価などの代替指標(サロゲートマーカー)を指標として評価する場合があります。しかし、HPVワクチンは発症予防と相関する抗体価は不明です。そこで、HPVワクチンでは新たに有効性を評価する際には、過去の検討で有効性が示されている対象群とのワクチン接種後の抗体価を比較します。


9価HPVワクチンの2回と3回接種後の抗体価

 HPV9の国際臨床試験で、9~14歳の2回接種(0、6か月)1か月後の抗体価と16~26歳の3回接種(0、2、6か月)1か月後の抗体価を比較し、9~14歳の2回接種の抗体価が低くないこと(非劣性)が報告されました。(図1)

図1 9価HPVワクチンの年齢群別の接種後1か月の抗体価

9~14歳2回接種(0,6か月)と16~26歳3回接種(0,2,6か月)


 また、9~14歳の2回接種(0、6か月)と3回接種(0、2、6か月)後1か月後の抗体価も有意差ないこと(HPN45、HPV52を除く)が報告されました。(図2)

図2 9価HPVワクチンの接種回数別の抗体価
9~14歳2回接種(0,6か月)と3回接種(0,2,6か月)


 さらに、9~14歳の2回接種(0、6か月)でも、接種年齢を9~10歳、11~12歳、13~14歳の群にわけて検討すると。接種年齢が低い方が接種後の抗体価が高い傾向があることが報告されました。(図3)

図3 9価HPVワクチンの接種年齢群別の抗体価
9~10歳、11~12歳、13~14歳 2回接種(0,6か月)


 さらに、9~14歳の2回接種の接種間隔を6か月(0、6か月)での接種と12か月(0、12か月)での接種と比較すると、12か月での接種の方が抗体価が有意に高いこと(HPV45を除く)が報告されました(図4)。 

図4 9価HPVワクチンの接種間隔別の抗体価
2回接種(0,6か月間隔)と2回接種

 

9価HPVワクチンの2回接種 HPVワクチンの効果の持続