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9月, 2025の投稿を表示しています

小児のインフルエンザ

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  小児のインフルエンザ  インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類がありますが 、人に季節性流行を引き起こすのはA型とB型インフルエンザウイルスだけです。 A型インフルエンザウイルスは最も重篤な臨床疾患を引き起こし、ヒト集団における季節性流行やパンデミックの最も一般的な原因です。 症状と合併症(図1)  インフルエンザウイルスに感染した場合は、無症状のことや軽微な症状のこともありますが、重篤な合併症のために死亡することもあります。通常、突然始まる発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感、空咳、咽頭痛、鼻づまりなどの症状を特徴とします。吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状も小児ではよく見られます。また、結膜炎や眼痛を認めることもあります。インフルエンザの潜伏期(感染から症状発現までの期間)は1~4日、平均2日です。ウイルスは通常、症状発現の1日前から5~7日後まで排出されます。   多くの人は数日から2週間で症状が改善します。しかし、経過中に種々の合併症が出現し、生命を脅かされることもあります。  呼吸器合併症は小児から高齢者まで生じることがあります。小児では、クループ、気管支炎、中耳炎が起こることがあります。全年齢において、一次性インフルエンザウイルス性肺炎と二次性細菌性肺炎を起こすことがあり、呼吸不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などを起こす可能性があります。  神経合併症には、脳症、脳炎、横断性脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎が報告されており、成人よりも小児に多く見られます。幼児に熱性けいれんを引き起こすことがあります。一過性の意識低下や完全に回復することもありますが、後遺症を残したり脳死を伴う劇症急性壊死性脳炎が発生することもあります。 BMJ 2016;355:i6258 doi: 10.1136/bmj.i6258 図1 インフルエンザの症状と合併症 小児のインフルエンザ定点からの報告数(図2)  日本ではインフルエンザの流行状況を把握するために、約5000のインフルエンザ定点医療機関からの報告がまめられ、毎週公表されています。2023年は約231万例が定点から報告されました。このうち、5歳から9歳が最も多く78万例で、15歳未満の小児は168万人、73%でした。インフルエンザウイルスは、小児の呼吸器疾患の重要な原因です。 図2 年齢群別の...

フルミスト(2025年)

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  経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト)  鼻へ噴霧するタイプのインフルエンザワクチンです。日本では今まで承認されておらず、一部の医療機関で個人輸入した海外のワクチンが使用されていました。2024シーズンから日本で正式に承認されたために正規のワクチンが使用できるようになりました。2025年~2026年シーズンは販売量は増加するようですが、入荷量には制限があり、上限に達すると予約できなくなります。今年のフルミスト(LAIV)はインフルエンザAH1、AH3、B型(ビクトリア系統)の3種類のウイルスに対応しています。投与された弱毒ウイルスは鼻で増殖し免疫を誘導しますが、肺などでは増殖せず安全性が確保されています。 接種対象者 2~18歳 接種禁忌 妊婦、免疫不全者、免疫不全となる薬物の投与を受けている人 接種回数  1回 投与方法  ワクチンを両方の鼻に少量(0.1ml))ずつ投与します。接種直後にくしゃみが出ても、再投与はしないことになっています。 フルミストの有効性  海外で行われたフルミスト(経鼻弱毒生インフルエンザワクチン:LAIV)の臨床試験では、不活化インフルエンザワクチン(IIV)の有効性に勝るデータが報告されたため、非常に期待され発売されました。  米国では2003年に発売され、2009年以前に報告された3価のLAIVがIIVより有効性が高いというデータから、2014年に2から8歳に対して4価のLAIVをIIVより優先して接種することを推奨しました。しかし、2013-14年シーズンにAH1N1pmd09に対してLAIVは有意な有効性を示さず、IIVは有意な有効性を示したため、2015年にLAIVを優先する推奨を撤回しました。さらに2015-16年シーズンにもAH1N1pmd09に対してLAIVの有効性が低かったため、2016-17年シーズにはLAIVの接種の推奨を中止しました(2017-18年シーズンも推奨しませんでした)。2017年にLAIVに含まれるAH1N1pmd09のウイルス株がA/California/7/2009からA/Slovenia/2903/2015に変更され後に、米国では2018-19年シーズンからLAIVを再推奨しました。しかし、現在まで以前のようにIIVより優先的にLAIVを接種することを推奨はしていませ...

2025/2026のインフルエンザ コロナ後のインフルエンザの早期流行

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 インフルエンザの流行の開始と流行のピークが早くなっています   COVID-19が減少した後の2年間は、インフルエンザの流行が早期に始まり、ピークも12月になっています。インフルエンザワクチンの接種を早期に行うことをお勧めします。  インフルエンザは夏にかかることもありますが、毎年、冬に患者数が増加します。インフルエンザの患者数は、全国の約5000のインフルエンザ定点医療機関から報告されています。  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前のインフルエンザは11月に流行が始まり、1月末(4~5週)にピークがありました(図1 図2)。  COVID-19の流行後は、インフルエンザの大きな流行はありませんでした。しかし、COVID-19が減少した後、2022/2023年シーズンからインフルエンザの感染数が増加しました。2023/2024年シーズンは9月から報告数が増加し、流行のピークは12月初め(49週)でした。2024/25年シーズンも10月末(44週)に流行がはじまり、ピークは12月末(52週)でした(図1 図2)。   図1 2015~2025年のインフルエンザの報告数 インフルエンザは11月に流行が始まり、1月末(4~5週)にピークがありましたが、COVID-19の流行収束後はインフルエンザの流行開始、ピークともに早くなっています。 図2 2014/15シーズン~2024/25シーズンのインフルエンザの流行開始とピーク 2025~2026年シーズンのインフルエンザワクチンの予約