小児のインフルエンザ
小児のインフルエンザ
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型、D型の4種類がありますが 、人に季節性流行を引き起こすのはA型とB型インフルエンザウイルスだけです。 A型インフルエンザウイルスは最も重篤な臨床疾患を引き起こし、ヒト集団における季節性流行やパンデミックの最も一般的な原因です。
症状と合併症(図1)
インフルエンザウイルスに感染した場合は、無症状のことや軽微な症状のこともありますが、重篤な合併症のために死亡することもあります。通常、突然始まる発熱、筋肉痛、頭痛、倦怠感、空咳、咽頭痛、鼻づまりなどの症状を特徴とします。吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状も小児ではよく見られます。また、結膜炎や眼痛を認めることもあります。インフルエンザの潜伏期(感染から症状発現までの期間)は1~4日、平均2日です。ウイルスは通常、症状発現の1日前から5~7日後まで排出されます。
多くの人は数日から2週間で症状が改善します。しかし、経過中に種々の合併症が出現し、生命を脅かされることもあります。
呼吸器合併症は小児から高齢者まで生じることがあります。小児では、クループ、気管支炎、中耳炎が起こることがあります。全年齢において、一次性インフルエンザウイルス性肺炎と二次性細菌性肺炎を起こすことがあり、呼吸不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などを起こす可能性があります。
神経合併症には、脳症、脳炎、横断性脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎が報告されており、成人よりも小児に多く見られます。幼児に熱性けいれんを引き起こすことがあります。一過性の意識低下や完全に回復することもありますが、後遺症を残したり脳死を伴う劇症急性壊死性脳炎が発生することもあります。
小児のインフルエンザ定点からの報告数(図2)
日本ではインフルエンザの流行状況を把握するために、約5000のインフルエンザ定点医療機関からの報告がまめられ、毎週公表されています。2023年は約231万例が定点から報告されました。このうち、5歳から9歳が最も多く78万例で、15歳未満の小児は168万人、73%でした。インフルエンザウイルスは、小児の呼吸器疾患の重要な原因です。
日本ではインフルエンザによる入院、重症化の傾向を把握するために約500箇所の基幹定点医療機関からインフルエンザによる入院例が報告されています。2024年9月から2025年5月までに28,644例が報告されました。年齢別の入院数は60歳以上の高齢者が多数で、80歳以上が最多です。人口10万人あたりの入院率は、1歳未満の入院が最多で113、次が1歳から4歳が94.3で 80歳以上の81.3より入院率は高くなっています。
インフルエンザによる入院は全年齢で呼吸器合併症が多く報告されています。脳症や熱性けいれんなどの神経系合併症による入院は成人より小児の方が高頻度です。
インフルエンザによる集中治療室入室の頻度(図4)
インフルエンザの入院サーベーランスでは重症化の把握のために、入院時の集中治療室(ICU)への入室、頭部CT検査、人工呼吸器の利用が報告されています。2024年9月から2025年5月に入院時にICUに入室したのは1385例で、50歳以上が1067例で77%をしめていました。年齢別の人口100万あたりのICU入室は、一番高率なのは80歳以上の23.8ですが、次は1歳から4歳の22.7、1歳未満の19.6と小児でも高齢者と同じ程度の重症化のリスクがあります。小児のインフルエンザは感染し、発症することが多く、重症化してしまうことがあります。
インフルエンザワクチンは他の小児とワクチンと同じように、定期接種として接種していく必要があるワクチンです。