百日咳が増えています(2025年6月更新)
急激に百日咳が増えています
(2025年4月8日掲載)
(2025年4月12日追記)
(2025年4月15日追記)
(2025年4月22日追記)
(2025年4月25日追記)
(2025年6月30日追記)
(2025年7月12日追記)
百日咳は、新型コロナウルス感染症の流行で報告数が減少していましたが、急激に報告数が増加し、2025年6月模倣国数が多い状況が継続しています。
典型的な咳の症状が始まった後では、抗菌薬の効果が乏しく、耐性菌も増加しており、発症を予防するにはワクチンの接種が重要です。
百日咳は百日咳菌の感染で起きる呼吸器感染症で、連続する発作性の咳が特徴です。感染力は非常に強く、新生児から高齢者まで感染するリスクがあります。乳児、特にワクチン接種前の乳児が感染すると重症となり死亡することもあります。ワクチンが接種されるようになる前の20世紀前半では最も一般的な小児の感染症で、小児の主な死亡原因の一つでした。
日本では百日咳は、2018年から検査診断された症例を全て報告する制度が始まりました。2019年は15000例(平均1週あたり約300例)を越えていましたが、新型コロナウイルス感染症の流行で減少していました(図1)。1週間の報告数の速報値は2024年中頃から増加し始め、2025年は6月29日には39672例が報告され、報告制度が変更になった2018年以降で報告数が最も多くなっています。
2025年26週(6月23日~6月29日)には3353例が報告されました。さらに速報値に遅れて、多いときは約500例が報告されます。現在の報告数は、2018年に現在の全数報告制度になってから最多が継続しています(図2)。(以前の報告例では2019年35週の473例が最多でした)

図2 2023年から2025年26週の日本の週別の百日咳報告数(速報値)
東京都の報告数も、2024年中頃から増加しています。2025年27週(6月30日~7月6日)には301例が報告されました。

図3 2021年から2025年27週(~7/6)の東京都の週別の百日咳報告数
東京都感染症情報センター
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/pertussis/pertussis/
海外でも、2023年頃から報告数が増加し、英国、ヨーロッパ、中国、米国では過去の報告数と同程度か多くなっています。乳児の死亡例も報告されています。特に中国では2024年の報告数は7月までに40万例を超え、死亡例も23例が報告されています。
図4 海外(米国、ヨーロッパ、英国、中国)の百日咳報告数
日本でも近年での最大の百日咳の流行となっています。
百日咳は典型的な咳が出現してから抗菌薬を開始しても、その効果は乏しいと言われています。また、抗菌薬として第一に選択されるマクロライドに対する耐性を持った百日咳菌が中国を中心に報告されており、日本でもその報告例が増えています。典型的な症状が出る前に診断することは難しいため、予防が最も重要です。ワクチンは百日咳の発症予防に有効です。
新生児、乳児早期の百日咳は重症化し死亡する可能性があります。2025年5月28日までの報告で、最も重症化する可能性がある5か月未満の乳児は全国で456例が報告されています。(図5)生後2か月になったら、直ちに定期接種で5種混合ワクチンの接種を受けることが重要です。また、定期接種として5種混合ワクチンの接種開始前の新生児、生後2か月未満の乳児の百日咳を予防するために妊娠中のワクチン接種が有効であることが報告されており、先進国では接種が行われています。日本でも3種混合ワクチンの接種を受けることが可能です。
図5 年齢別の百日咳の報告例(2025年5月28日まで)
さらに、百日咳ワクチンの効果は接種後徐々に低下するため、小児だけではなく成人も含めて追加接種が必要です。現在、小学校入学後から10歳代で百日咳の報告例が多くなっています。

図6 東京都の年齢別の百日咳報告数(2025年7月6日まで)
小学校入学前、思春期に三種混合ワクチンの接種を受けていない場合は、予防のために3種混合ワクチンの接種が必要です(図7)。